暦を手がかりに、自然と心をつなぐ暮らし
8月。
太陽はまだ高く照りつけ、蝉の声も力強く響く季節。けれど、暦の上では「立秋」を迎え、風や空の色にほんの少しだけ秋の気配がまじりはじめます。
忙しない日々の中で、つい見落としてしまいがちな自然のサイン。
でも、季節の移ろいに目を向けてみると、私たちの暮らしや心にも、静かに訪れている“変化”に気づけるかもしれません。
今回は、「暦」や「季節の言葉」をヒントに、心と体をゆるやかに整える8月の過ごし方をご紹介します。
二十四節気・旧暦でめぐる8月の季節

夏土用(7月19日~8月6日)
土用とは、季節と季節の間にある「隙間の時間」のようなもの。
自然界でも、人間の体の中でも、目には見えない“切り替え”が起きています。
この時期は、なんとなく疲れやすかったり、やる気が出にくかったりすることもあるけれど、それは心と体が次の季節に備えている証拠。
無理に頑張るよりも、「休むこと」もまた前進の一部だと捉えて、日常をやさしく受けとめる意識を持ってみてください。
立秋(8月7日ごろ)
立秋は、暦の上では秋の始まり。
でも外はまだまだ猛暑……ちょっと違和感を覚える人も多いかもしれませんね。
でもこの「違和感」こそが、まさに季節の変わり目のサイン。
冷たいものが美味しく感じる反面、冷えすぎた体がだるくなったり、頭がぼんやりしたりすることも。
少しずつでも、あたたかい飲み物やお味噌汁などを取り入れて“秋仕様”の体に整えていくのがおすすめです。
処暑(8月23日ごろ)
処暑の頃になると、日が短くなり、朝晩の風に少しだけ秋の匂いが混ざり始めます。
蝉の声が和らぎ、夜には虫の音が聞こえ始めることも。
この時期は「夏が終わってしまう寂しさ」と「秋への期待」が同時にやってくる、感情の揺れが起きやすい時期でもあります。
そんなときは、季節の変化に焦らず、ただ“今”を感じるひとときを持つことが、心の安定につながります。
8月のおすすめの過ごし方:体と心の“養生”

食べるもので整える
身体は季節とともに変化していきます。
だからこそ、「食べたい」と感じるものを信じてあげることも、実は立派なセルフケア。
夏の終わりは、火照った体を冷ましながらも、次の季節に備えて少しずつエネルギーを溜めていく準備期間。
涼やかな野菜だけでなく、胃腸をいたわる発酵食品やスープ、卵などのたんぱく質も意識的にとると、秋の体がつくりやすくなります。
🌻トマト、きゅうり、冬瓜など体の熱を冷ます食材
🌻鶏肉、卵、白木耳(しろきくらげ)など胃腸にやさしく滋養のある食材
🌻甘酒やハーブティー、麦茶など喉を潤し巡りを整える飲み物
夏バテ気味のときこそ、無理にがんばらず「食べやすくて、おいしいもの」を丁寧に選ぶことが大切です。
朝と夜の小さな習慣
朝、窓を開けた瞬間の空気の匂い。
夜、ほの暗い部屋に灯すキャンドルのやわらかさ。
そんなふとした時間の中に、「わたしの暮らし」の輪郭を見つけられることがあります。
忙しくても、ほんの数分、自分だけの“季節を味わう時間”を持つことで、暮らしに余白が生まれます。
🌻朝は、窓を開けて風を感じる。白湯を飲む。5分だけストレッチする。
🌻夜は、間接照明で灯りを落とし、涼やかな香り(ミント、ラベンダーなど)を取り入れる。
毎日でなくてもいい。
自分のペースで、「季節の流れに沿う」時間をそっと作ってあげることが、なによりの養生になります。
旧暦・七十二候・季語にふれる暮らし

旧暦七夕(2025年は8月10日)
昔の暦では、星がもっとよく見える季節に七夕が行われていました。
梅雨も明け、空が澄みきる8月の夜空。
願いごとを短冊に書かなくても、夜空を見上げるだけで、自分の本当の願いに気づくこともあります。
手紙を書くように、星に言葉をかけてみるのも、現代だからこそできる静かな儀式かもしれません。
季語で季節を味わう
季語とは、季節を映す“ことばのかけら”。
「涼風(りょうふう)」:立秋後の涼しい風のこと
「白露(はくろ)」:夜に露が降り始める初秋のサイン
「向日葵(ひまわり)」:夏の陽をまっすぐ見上げる力強さ
こうした言葉を、日記やSNSのひとことに忍ばせると、暮らしが少しだけ詩的に感じられるようになります。
言葉には、季節を感じる感性を育てる力があります。
わたしをととのえる、自然とつながる時間

大きな予定も、派手な出来事もいらない。
たった5分、風の音に耳を澄ませるだけで、私たちは自然とつながることができます。
散歩の途中で見かけた蝉の抜け殻。
いつもより少し早く目覚めた朝の、澄んだ空気。
夕立のあとの、湿った土の匂い。
そのすべてが、「わたしが、ここにいる」感覚を思い出させてくれる。
8月という季節は、そんな静かなつながりを見つけるチャンスに満ちています。
植物を眺めながら朝の深呼吸をする
季節のハーブを浮かべたお茶で休憩する
短い散歩の途中で、空や雲の形に気づく
こうした時間は、スマホや予定帳では味わえない、“今ここ”を感じるための小さな贈り物です。
おわりに:季節の声に、そっと耳を澄ませて
暦の上で秋が始まる8月。
私たちの心や体も、少しずつ次の季節に向けてととのっていきます。
毎日をがんばりすぎなくても大丈夫。
空の色、風の音、日が落ちる速さ——
小さな変化を感じることで、暮らしはもっとやさしくなれるから。
今月も、季節の移ろいを味わいながら、あなたらしいペースで過ごせますように。



コメント